- 過蓋咬合(かがいこうごう)や上顎前突(じょうがくぜんとつ)では、上顎(じょうがく)と下顎(かがく)それぞれの出ている程度や上下のバランスがずれている程度を評価します。その結果から、いつどのようにして上顎前歯を持ち上げるか、下顎を前方に成長、適応させるかなどの方針を決めます。また、噛みしめ、歯ぎしりによっても噛み合わせは影響されますし、猫背などの姿勢も上顎前突や過蓋咬合を助長していることがあります。したがって、矯正歯科では症状の程度やその原因、成長段階に配慮した治療方法を選択する必要があります。
- 6〜8才までは歯列矯正用咬合誘導装置(プレオルソなど)などで歯ぎしりなどの習癖除去をしたり、呼吸や食事などに留意したりして、口、舌、頬などの調和を図りながら成長を観ていきます。
- あるいは、8〜12才ごろに上顎の前方成長を抑えて下顎の前方成長を促して矯正することもあります。10歳前後に床装置で噛み合わせを浅くしつつヘッドギアを併用することもあります。
- 上顎前突の患者さんの中には、下顎が小さいことも多いので、永久歯が生えそろい体格が成長するのを待ってからブラケット装置で全体を整列します。この時は噛み合わせの程度を検査・分析して歯を抜くかどうかを判定します。
- なお、骨格的な問題を改善するためには手術する必要があるかもしれません。この時には九州大学病院、福岡歯科大学医科歯科総合病院などに紹介します。
- 矯正治療が終わっても、戻ることがありますので保定装置を継続する必要があります。是非、治療後には長期に定期検診に来ていただき、併せて定期的な検査・評価をお勧めします。
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自宅にいるときに機能的矯正装置(アクチベータ)と顎外固定装置(ヘッドギア)をしっかりと使用してくれましたので、成長期に顎が成長適応してくれました。主訴:噛み合わせが深い,診断:過蓋咬合,開始年齢:9歳,治療期間:26か月,装置:機能的矯正装置;顎外固定装置,非抜歯,治療費:20万円(当時)
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四角い上下顎歯列弓形態でしたので、始めに上顎を丸い形に整えて、続けて下顎も丸く整えました。後戻りしやすいので、下顎はワイヤ固定して形態を維持しました。主訴:前歯の形が悪い,診断:過蓋咬合,開始年齢:12歳,治療期間:18か月,装置:歯列矯正用咬合誘導装置;ブラケット装置,非抜歯,治療費:64万円(当時)
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小学校高学年の時に上顎歯列の拡大と顎外固定装置(ヘッドギア)で上顎の後方移動をしました。その効果が出たので歯を抜かずに整列できました。主訴:前歯が出ている,診断:上顎前突,開始年齢:12歳,治療期間:36か月,装置:拡大床装置;顎外固定装置;ブラケット装置,非抜歯,治療費:60万円(当時)
- 骨格性の上顎前突と思われる症例では上下顎歯列の被蓋を思案するよりもまず、顎骨の成長にアプローチすることが大切です。ヘッドギヤと機能的矯正装置を組み合わせると下顎位と咬合高径を調節できます。また、上顎歯列弓を側方拡大することも考慮に入れてください。顎骨に成長余力のある間は、特に患者の協力が得られるならとても有効です。そのあとで、抜歯すべきかどうか判定するようにしています。
患者さん・保護者の方へ
歯科医の先生方へ
骨格や噛み合わせの程度、矯正を始める年齢および協力度によって治療の効果や期間はちがいます。ご相談に来院された時に治療方法や期間、料金について詳しく説明します。 | |
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- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間1、2週間で慣れることが多いです。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について