- 反対咬合(受け口)や開咬では顎(あご)の成長がいつまで、どこまで進むかということに注意する必要があります。また、慢性鼻炎や舌が大きくて反対咬合や開咬を助長していることもあります。なかには歯の方向が良くなかっただけのことも見られます。したがって、矯正歯科では症状の程度やその原因、成長段階に配慮した治療方法を選択する必要があります。検査・診断した結果、歯を抜かずに整列することもあれば、歯を抜いて整列しなければならないこともあります。だいたい治療のタイミングは4〜8歳頃、10歳前後、骨格の成長を待って中学生以降の3段階があります。
- 4〜8才では歯列矯正用咬合誘導装置(ムーシールド、プレオルソ、パナシールドなど)で習癖除去をしたり、呼吸や食事などに留意したりして、口、舌、頬などの調和を図りながら成長を観ていきます。
- 10〜12才ごろには、器具を使って部分矯正をすることがあります。この時は検査・診断に基づき、床装置、機能的矯正装置、舌側弧線装置、フェースマスク、ブラケット装置などを選択します。
- 反対咬合の患者さんでは下顎の成長について注意しなければなりませんので、永久歯が生えそろい体格が成長するのを待ってから全体を整列しますが、噛み合わせの程度を検査・分析して歯を抜くかどうかを判定します。
- なお、骨格的な問題を改善するためには手術する必要があるかもしれません。この時には九州大学病院、福岡歯科大学医科歯科総合病院などに紹介します。
- 矯正治療が終わっても、戻ることがありますので保定装置を継続する必要があります。是非、治療後には長期に定期検診に来ていただき、併せて定期的な検査・評価をお勧めします。
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こちらは成人でしたが、上顎歯列を拡大して歯を抜かずに整列できました。主訴:受け口,診断:反対咬合,開始年齢:28歳,治療期間:22か月,装置:ブラケット装置,非抜歯,治療費:70万円(当時)
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こちらも成人でしたが、歯を抜いて整列しました。主訴:前歯の噛み合わせが悪い,診断:反対咬合,開始年齢:34歳,治療期間:34か月,装置:ブラケット装置,抜歯部位:下顎右側第2小臼歯;下顎左側第1小臼歯,治療費:71万円(当時)
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10歳頃から機能的矯正装置(アクチベータ)で噛み合わせを改善してから前歯を整えました。主訴:反対咬合,診断:反対咬合,開始年齢:9歳,治療期間:12か月,装置:アクチベータ;ブラケット装置,非抜歯,治療費:18万円(当時)
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歯列矯正用咬合誘導装置(ムーシールド)を使用して就学前の幼児の噛み合わせを治すことができました。主訴:受け口,診断:反対咬合(乳歯列期),開始年齢:4歳,治療期間:24か月,装置:歯列矯正用咬合誘導装置,非抜歯,治療費:6万円(当時)
- 永久歯列完成前に前歯部被蓋を改善してから下顎骨の成長を観察することをお勧めします。チンキャップの使用は被蓋を改善するための短期間では有益ですが、幼児期から長期間使用し続けることは慎重にすべきと思っています。また、最近では上顎前方牽引装置(フェースマスクやフェースボウ)の方が上顎を前下方へ引き出して被蓋の改善に効果的とされています。
- また、低年齢では歯列矯正用咬合誘導装置(ムーシールド、プレオルソ、パナシールドなど)を使用することもあります。
- 反対咬合など骨格に問題があると思われる患者は放置して成長観察するのでなく、できるだけ咀嚼が行えるように被蓋を改善してから観察することが望ましいといえます。そして、顎骨の成長が終わってから再評価し、治療計画を立て直します。
患者さん・保護者の方へ
歯科医の先生方へ
骨格や噛み合わせの程度、矯正を始める年齢および協力度によって治療の効果や期間はちがいます。ご相談に来院された時に治療方法や期間、料金について詳しく説明します。 | |
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- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間1、2週間で慣れることが多いです。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について